ガラスの靴の期限
自分の恋愛指向や性的指向が同性に向いていると気付いたのは、中学の卒業を間近に控えた頃だった。
マイノリティ側の人間なのだと理解してしまえばあとはもうどうって事ない。自分が誰かに想いを寄せたとて叶うはずもないのだ。結婚適齢期と呼ばれる年齢になった辺りで、悪くない条件の女と結婚して、子供を授かって、そこそこの年齢で死ぬ。そんなつまらない人生を送るのだろうと諦念を抱いたまま進学した高校。
浮かれていたのだろう。アプローチも決定打となる告白も、向こうからだったというのが拍車をかけた。こいつとなら、なんて。そんな事を本気で思ったいた当時の俺は相当頭がイカれてたに違いない。どんなに想ったところで女という生き物には勝てやしない。結局、あいつも女を選んだのだから。
トラウマ。と言えばそうかもしれないし、そこまでではないかもしれない。ただあれから、誰かとの間に恋人というラベルを貼る事はなくなった。何かを貼るとしたらそれはセフレだろう。まぁわざわざ貼った事はないけれど、あの最悪とも呼べる日からおよそ六年。それなりに楽しく生きていると思っているし、思っていた。
「お、来た来た!樹~久しぶりだな!」
「貴明……と、ゆず、る……久しぶり」
少なくとも、この瞬間までは。