若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
ビルという俺の台座が無い場所で、自分の才能があるかどうか、試してみればいいじゃないか』…と言ったんだ。

多分、俺が自暴自棄になって、設計から逃げ出そうとしていることに気づいていたんじゃないかな。
ずっと自分と同じ道を歩む必要はない、と言っていたのに、後にも先にも、止められたのはその時だけだった……」


思い出したように語った彼は、少しの間沈黙して項垂れた。
私にはそれが泣いているようにも見え、何となくジーンとして、胸の奥が熱くなった。



「いい…お祖父さんなのね」


自分の祖父を思い浮かべながらそう言うと、顔を上げた彼が微笑んで、「うん」と小さく頷いてくる。
だから、私は少し自分にも共通している気がして、微笑み返しながら、「それで?」と続きを訊いてみた。


「…俺は祖父の言葉で気持ちを奮い立たせて、もう一度だけ自分の力を試そうと思った。
どうせ社内のコンペだし、本気を出したところで、ベテラン達には敵わないだろうと思っていた。

…けれど、やるだけやろうと躍起になっているところへ若手社員達が集まってきた。
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