若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
さっきまでじっくり彼の話を聴き過ぎていたものだから、妙に親近感が湧いて、彼と友達みたいな感覚に陥っていた。


「ん…?」


振り返る彼が、私の方へ目線を向ける。
それだけなのに私は焦ってしまい、胸をドキドキさせながら、「これ…」と言ってスケッチブックを差し出した。


「この間、見せて頂いたライトショーを思い出して、私なりのデザイン画を描いてみたの。色彩は色鉛筆だから、少しわかり難いかもしれないけれど、割と自信作なのよ、これ」


説明しながら渡したスケッチブックには、瑠璃色の地に背の高いビル群が波状に描かれ、その上をシルバーの光を放つ蛍が浮遊している。

蛍が飛び立とうとしている場所として描いたのは、ビレッジのテナントビルを模した円柱の建物。

それに房付きの組紐を巻き付け、まるで貝桶のような感じで仕上げて、そこから羽を広げた蛍がいろんな方向へ飛び立つシーンを描いた。


「蛍の光は、『割付(わりつけ)』といって伝統的な文様の一つなの。それがビレッジのテナントビルから飛び立ち、瑠璃色の地球上に拡がっていく……というイメージなのよ。

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