あの丘で、シリウスに願いを
「…それ。それです。
翔太先生もご存知の通り、私、生まれつき心臓に欠陥があって。色んな病院を巡ってようやく一条教授に出会えたんです。長くは生きられないと言われた私を手術して下さり、未来をくれました。
教授は私にとって命の恩人なんです」
「うん。当時、まだ幼い君にあの手術したことは話題になったからね、知ってるよ。親父殿の名声はうなぎのぼり。今じゃあの術式はスタンダードになった」
「手術のあと、高校生になるまで毎年経過を調べる為に大学病院に行ってたんです。
田舎から、東京に行くのは我が家にとっては一大イベントで。両親と二人の兄と五人で毎年来てました。1日がかりでたくさん検査をして、夕方に検査結果の数字がいっぱい書いてある紙を一条教授と一緒に見るんです。
子供だから数字の意味なんてわかりません。だから、教授のボールペンをじっと見るんです。
両親に説明したあと、そのボールペンが紙の真ん中に大きな花マルを書いてくれたら、ご褒美が待ってた。花マルが無ければ、苦い飲み薬が増えて、また半年後に再検査。
子供ながらに、教授の黒く光るボールペンが花マルを書く瞬間はドキドキでした」
翔太先生もご存知の通り、私、生まれつき心臓に欠陥があって。色んな病院を巡ってようやく一条教授に出会えたんです。長くは生きられないと言われた私を手術して下さり、未来をくれました。
教授は私にとって命の恩人なんです」
「うん。当時、まだ幼い君にあの手術したことは話題になったからね、知ってるよ。親父殿の名声はうなぎのぼり。今じゃあの術式はスタンダードになった」
「手術のあと、高校生になるまで毎年経過を調べる為に大学病院に行ってたんです。
田舎から、東京に行くのは我が家にとっては一大イベントで。両親と二人の兄と五人で毎年来てました。1日がかりでたくさん検査をして、夕方に検査結果の数字がいっぱい書いてある紙を一条教授と一緒に見るんです。
子供だから数字の意味なんてわかりません。だから、教授のボールペンをじっと見るんです。
両親に説明したあと、そのボールペンが紙の真ん中に大きな花マルを書いてくれたら、ご褒美が待ってた。花マルが無ければ、苦い飲み薬が増えて、また半年後に再検査。
子供ながらに、教授の黒く光るボールペンが花マルを書く瞬間はドキドキでした」