あの丘で、シリウスに願いを
ボールペン一つで涙するくらい熱いものを持っていて、親友の妻に我を忘れるほど親身になれる。
だけど、普段は軽薄でフラフラしていて。

この上司、優秀なのか、ただのヘタレなのかよく分からない。

「今日は、もう大丈夫だよ。早く帰ってゆっくり休んで。ホントは夕飯でも一緒にって誘いたいとこだけどねー」
「じゃ、お先に失礼します」
「ハイ、お疲れ様でした。色々ありがとねー」


軽く頭を下げてから部長室を出て行くまことを見送って。


翔太はふうっと息をついた。


『シリウスの花マル』の話を聞いてから、気になる存在だった。柊子の出産に際しても翔太を叱責するほど冷静に対応した。父の推薦通り医師として優秀だ。
それに。
先ほど、心臓に負担かけないように生きていることを指摘したときに見せた、驚きと戸惑いの混じった表情。図星だったのだろう。

「未来のうちのエースを、もう少しよく知らなくちゃなぁ」

六平まことに興味をくすぐられた。医師としてもそして、女性としても。





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