あの丘で、シリウスに願いを
トクン。
鼓動の音を感じた。男性に対して心臓が反応したのは久しぶりだ。

「今日は本当にありがとう、まこと先生。助かったよー。まさか、柊子ちゃんと知り合いだったなんて。仕事明けの疲れているところ、悪かったね」

そうだ。思い出した。あの慌てよう、彼女を見る目。この男は親友の妻に横恋慕しているのではと勘ぐりたくなる。

「いえ。無事に産まれてくれるといいですね」
「本当。柊子ちゃんは妹みたいな存在でね。あの子がお母さん、洸平がお父さんになるなんてなぁ。なんか、信じられないんだ」
「妹…ですか?」

怪しまれていると気付いて、翔太は不敵な笑みを返した。

「あれ?まさか、まこと先生気になる?」
「まぁ、あれだけの慌てようを見れば、勘ぐりたくもなりますけど。私には関係ないことですので」

冷たくばっさりと言い放つまこと。


「本当に妹的な存在なんだよー。
関係ないとか言わないで。俺はドキドキしたよ?まこと先生に一喝されて。
なんかさ、このあいだの『シリウス』のことといい、今回のことといい、まこと先生には恥ずかしいところばっかり見られちゃったよなぁ。
俺、上司なのに」

本気で恥ずかしいなんて思ってもいないような、軽い態度にまことは小さくため息をついた。


< 49 / 153 >

この作品をシェア

pagetop