あの丘で、シリウスに願いを

「これ、翔太が関わってるって知ってる?」
「はい」

「小学生だったのよ、あの子。あの当時アタシは初めて銀座に店を出して上手くいかなくて挫折してた頃で。ある日、そんなアタシの所にあの子がひょこっとやって来て、シリウスを売り込んできたのよ。
同じ銀座に“大星堂”っていう手作りの高級文房具を扱ってる店があることは知ってたわ。今にも潰れそうな老舗。まぁ、同じ銀座で店を構える同士、一本くらいつき合いで買ってあげようかな程度に思ったわけ。

そしたら、翔太が言ったの。キャッチフレーズは、『色褪せない記憶を残すもの』誰かの一番であれと夜空で一番輝く星の名前を冠したボールペンだって。まずは使ってみてって。きっと、アタシの一番になるからって。
そうしたら、もぅ、今までの使い捨てボールペンなんて戻れなくなった。アタシの手の一部みたいで、すぐに一番の相棒よ。

誰かの一番になる。
あの時、万人にうけることばかりを追いすぎていたことに気付かされた。アタシは、アタシらしく、一番になろうって思ったキッカケになったのよ。翔太とシリウスのおかげでね」


ここにも、シリウスが起こした奇跡があった。
幼い頃から翔太は、人の心を掴むのが上手かったようだ。こんな風に人を惹きつける力は、彼の秀でた才能だと思う。




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