あの丘で、シリウスに願いを
まことは、手にしたワンピースを見つめた。
ため息がでるほど綺麗で、柔らかくて手触りの良いワンピースだ。


どうせ、似合わない。女の子らしい服は全て似合わない。高すぎる身長も凹凸に乏しい体型も、女の子らしさなんてどこにもない自分には似合わない。

でも、断れる雰囲気ではない。
有名な世界的デザイナーを目の前にして、彼に直接“着てみて”と渡された服を突き返すほどの度量は持ち合わせていない。

「とりあえずそこで着替えて」

ジュンが指差した部屋の片隅には簡単にパーテーションで区切られた一角があった。
仕方なく、まことはそこで着ていた服を脱いでワンピースに袖を通す。

「どーお?うん、いいじゃない。すごく似合ってるわ。…あら」

ジュンの視線が、まことの胸元で止まっている。

「あぁ、これですか」

セクシーに深いV型になっている胸元から見えるのは、胸の谷間ではなくて引き攣れた皮膚。手術の跡だ。

「このデザインはやめましょうか。他なら…」

ジュンは、傷跡について何も検索せずにラックにかかった他の服を探す。

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