あの丘で、シリウスに願いを
翔太は、ハッと我に返った。
夢うつつの状態で部屋を見渡す。ここはベリヒルの自分の寝室だ。
まことが着替える間待っているつもりで、ベッドに座ったことは覚えている。なかなか部屋が暖まらないから毛布でもかぶろうと思ったのが、間違いだ。

時計は深夜一時を過ぎたところ。終電も終わっている。おそらく、まことは帰っただろう。彼女のことだ、寝てしまった翔太に気を使って声をかけずに帰ったに違いない。


『シリウスの花マル』の話から、まことが気になり始め、彼女をもっと知りたくなった。
普段はいつもどこか冷めていて、喜怒哀楽の感情が薄い。

大星親子に会わせても、ジュンに会わせても、嬉しそうにはしていたけれど、いつもの落ち着きは残していた。
それが、レストランで夜景を見ながら食事をして、話をしていた時だ。
野球の話が出た途端、彼女の目が輝いた。あんなにイキイキとした彼女を初めてみた。


あの笑顔をずっと見ていたいと思った。


恋愛関係なんてそんな遊びの関係を結ぶような相手じゃない。上司というより、一人の人間として心臓に不安を抱える彼女を支えてやりたい、安心して頼れる存在になりたいと、強く思った。


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