あの丘で、シリウスに願いを
翔太はベッドから降りると、寝室を出る。


リビングに、明かりが灯っていた。
暖房が効いている。

「…⁈」
翔太こだわりのお気に入りのソファにもたれて眠るまことの姿を見つけて、ハッとなった。

自分のテリトリーともいえるリビングに、まことの姿がある。しかも、そこに違和感は全くない。
むしろ、その姿は愛おしいほど。
疲れて帰った部屋に、ナナの姿を見つけてホッとする時に似ている。


「まこと、こんな所で寝ていたら風邪ひくよ」


声をかけてみたが、気持ちよさそうに眠ったまま。そのあどけない寝顔にそっと触れてみる。


女の子は、可愛くてスタイル良ければよし。
後腐れない関係が大前提。一緒にいる時間だけ楽しければそれでいい。必要なのは息抜きできる時間。だから、女の子に振り回されたりする時間は無駄だと思っていた。
モデルに女優、キャビンアテンダントなどなど。ちょっと声をかけるだけで、ひと夜の恋の相手には困らない。


そんな翔太が今、戸惑っていた。

いっそ、ベッドに運んでゆっくりと寝かせてあげればいいのか、起こして横浜へ返せばいいのか、わからない。女の子に対して、そんな戸惑いは初めだ。

ただ。まことを近くで感じながら眠れたら、ナナがいる時のような癒しを得られる、そう思った。










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