マリッジ大作戦
 そう言ったきりパジャマではなく、クローゼットの服を着始めたまゆりは、首にぶら下がっているピンクダイヤモンドのネックレスを外し、カウンターテーブルにそっと置いた。

『……瑛士。終わりにしよう。』

 出ていく後ろ姿をみながら、とんでもないことを言ってしまった後悔と、自分のことを犠牲にしてでも手に入れたいと思ってはくれないんだと言う喪失感が押し寄せた。

それから明け方までまゆりのベッドで過ごしながら、帰りを待ったがまゆりは帰って来なかった。

朝方、まゆりの家を出て東郷リゾートの本会議に向かい、父親と弟、人事部長の叔父と対面し見合いを断る旨を伝えた。

繁栄を願う叔父は、納得せずに、ヨーロッパを拠点するリゾート計画を10年かかっても良いが上場企業にすることが出来たなら、財閥の力がなくても繁栄できると、ニヤニヤしながら提案してきたのだ。

『あの計画のことを言ってるんですか?』

疑問を口にする。

無理難題なのは分かっており、父親も弟も驚いた顔をしていた。

『私たちは、副社長の幸せは、同じ世界にいる伴侶を得て、早く社長になることだと思っていますよ。』

父親も弟は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
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