マリッジ大作戦
-あぁ。まだ好きなんだなぁ-

まゆりは、心の中でそう感じていた。

「さっき帰ってきて、成田から直行してきた。」

「……ん、お帰りなさい。」

「ヨーロッパに行ってたんだよ。」

「らしいね。聞いてたよ。」

話しながらどんどん距離を縮めてくる瑛士に、まゆりは動けずにいると、ふいに、手を捕まれた。

目線をそらそうとしたまゆりの顎を反対の手でクイッと持ち上げられ、まゆりと瑛士の視線が交わる。

「……おれ、別れたつもりないから。」

「えっ？」

その言葉と同時に、顔が近づいてきたと思ったら、一瞬のうちに唇を奪われた。

「んっ、……んんっ。」

逃れようとするまゆりを逃さないように握られていた手は腰に回され、力強く抱きしめられ、それでも離れようとするまゆりに気がついたのか、次は容赦なく唇の間から下がねじ込まれ、
終わった時は、力が入らず、まゆりは瑛士に寄りかかっていた。

「まゆり、キス下手になったんじゃない？」

息を整えているまゆりは、反抗する気力もなく火照った顔と涙目を瑛士に向けた。

「やっべー。その顔可愛い。」

昔と変わらない笑顔をまゆりに向ける瑛士はとても次期社長には見えなかった。
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