地獄船
そう思い、浩成へと視線を向ける。


浩成は不安そうな表情をこちらへ向けているだけで、なにも言わなかった。


「早く来いってば!」


子鬼の1人が綾の腕を掴んで引っ張った。


「おい、なにすんだよ」


俺は綾の手を離すまいと力を込める。


「早人、ダメだよ。あたし、行かないと」


綾の涙が頬を流れて行く。


小恋はすでに広間の中央に立って鬼を見ている。


なんでだ?


なんで綾まで?


頭の中はひどく混乱していて、わけがわからない。


「なんだよお前、邪魔すんなよ」


子鬼が俺を睨み付けてそう言った。
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