地獄船
「違う、そうじゃなくて……」


か細い声でそう言い、指を指す。


そちらへ視線を向けると柱にへばりついたままの千春の体があった。


その周りに子鬼たちが群がり、肉を引き裂いて食べているのだ。


壮絶な光景に一瞬にして吐き気が込み上げて来る。


俺はできるだけ綾から離れ、さっき食べた物を全部吐き出した。


子鬼たちが俺を指さしてゲラゲラと笑っている。


「吐いてやんの」


「きったねぇ!」


「だっせぇなぁお前!」


甲高い声が耳障りだ。
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