今日のソライロ〜死の都
…お兄ちゃん……、お兄ちゃん……。



……お願い、目を覚まして……。



あの時の記憶は思い出したくもない。

わたしには、七歳年上の兄がいたのだ。

けれど、わたしが五歳の時に遊びに行った海で水難事故に遭い、十二歳で亡くなった。



優しいお兄ちゃんだった。いつも我が儘なうちを可愛がってくれて、本当に大好きだった。



お兄ちゃんのお葬式で、棺の中で眠る彼はまだ生きてるようで、でも、触れたら氷のように冷たくて、あの時、始めて「死」というものが分かった。

火葬場へ行く時に、

「お兄ちゃんをつれてどこいくの?」

とお母さんに問いかけて、

「これからお兄ちゃんを焼きにいくのよ。」

って言われて、泣きわめいたことも。



それからわたしはひどく落ち込んで、大好きな筈の保育園に行こうとしなくなった。



それまでは人は年老いたら死ぬ、若い人は死なないって思っていた。

じゃあ、お兄ちゃん以外に、大好きな両親、幼なじみも死んじゃうんだって思って怖くて悲しくて……。




その最中、幼なじみが全員で遊びに来てくれて、



「あれ?なんで、ゆーたんもかずにぃもりっちゃんもなっちゃんもうしわかもすえにぃもここにいるの?」

うちの問に

「いつまでもベソかいてちゃあ何も始まらないわよ。たまには思いっきり遊ばなきゃね。」

それに

「平安時代や、鎌倉時代に行って呼び出すの大変だったわ~。」

「ねぇ、みんなはしんじゃったりなんかしないよね?」

いきなり言ったものだからみんながキョトンとする。

お母さんが

「こら、何変な事をいってるのよ❗もう……本当に変な子なんだから。

みんな、ごめんなさいね……。」 

「明日美ちゃん、何かあった?」

一翔が心配そうに顔を覗きこんでくる。

「だ……だいじょうぶ、だよ。」

少し長い前髪を指でいじりながら嘘をついた。




自分には一体何が出来るのだろう?



誰かを守る事すら出来ないの?









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