俺様外科医との甘い攻防戦

 力なく首を横に振る。
 怖くはない。怖くないはずだ。

 でももしも夢で見た通り、憧れの人が久城先生だったとしたら……。

 今のこの関係は、なかったかもしれない。

 私が東雲先生に憧れ、彼の後ろ姿に見惚れていたから。
 その姿を見て、久城先生が気にかけてくれた。

 最初から久城先生が好意の対象だったとしたら、その他大勢の自分に好意を向ける面倒な相手。
 その立場に落ち着く光景が、簡単に想像できる。

「久城先生は、東雲先生とお知り合い、なんですか?」

 こんな簡単な質問をするのでさえ、声が震えそうになる。

「知り合いなんてもんじゃない。悪友だな」

「悪、友……」

「家が近所で、親同士も仲が良かった。あいつの家には、よく遊びに行っていたよ」

 想像が、音を立てて現実になっていく。
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