俺様外科医との甘い攻防戦

 頭を撫でられ、肩を揺らす。

「陽葵」

 低く体に響く声は、名前を呼ばれるだけで涙が出そうになる。

「それで、不安になった? 律紀に騙されそうな可哀想な子として俺と出会わなければ、俺が陽葵に好意を抱かないんじゃないかと」

 全て見透かされ、黙り込む。

「そんなことで不安になるくらい、俺の気持ち届いてないのか」

 頭にキスを落とされ、胸にはこれ以上埋められないのに、顔を押し付ける。

「顔を上げて。陽葵」

 促され、おずおずと顔を上げる。

「だって、久城先生。私のこと、大して好きじゃなかったですよね?」

「ハハ。痛いとこ突くね」

 困ったような顔を見て、言葉が止まらなくなる。

「親愛は、確かに感じていました。けれど男女の好意としての愛情は……」

「それはそうでしょう」

 前置きを聞いただけで、胸が張り裂けそうになる。『大して好きじゃなかったんだから』と続く言葉を、本人の口から聞きたくない。

 ギュッと目をつぶると、まぶたに優しいキスが降る。
 それから、久城先生は話し出した。
< 144 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop