俺様外科医との甘い攻防戦

 時間を見計らいリビングに姿を現すと、顔を上げ目を丸くする。

「陽葵。起きていたのか」

 手に持っているグラスをテーブルに置くのを横目に見ながら、久城先生の隣に座る。

「ここに住まないと、私との時間が取れないって」

「ああ」

「ここにいても、取るつもりないじゃないですか。せめてベッドで寝てください」

 覗き込むように訴えると、腿に肘をつき、自身の髪に手を差し入れた久城先生と目が合った。
 それは、見たことのない鋭い眼差し。

 これでは、蛇に睨まれたカエルだ。
 ぎくりとしても遅かった。

 手を取られ、そのままソファに押し倒され見下ろされる。

「俺、今、手術終わりで」

「え、ええ」

 体勢のせいだろうか。
 今の久城先生を怖いと思った。

「アドレナリン出まくてて、興奮状態だから眠れない」

「それなら、なおのことベッドで」

 最後まで言い終わる前に、久城先生は被せて言う。

「ヤリたい。それも乱暴に」

「なっ」

 言葉を失っていると、ソファに押さえ込まれていた両手を外される。

「わかったなら、手術後の俺に近づかない方がいい」
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