俺様外科医との甘い攻防戦

 顔を背けられ、こちらに向けられた広い背中に問いかける。

「それは、医師全般に言えることですか?」

 ゆっくりと振り返った久城先生は、酷く冷たい顔をしていた。

「そうだな。だから、陽葵が嫌いな医師ができあがるのかもな」

 私は咄嗟に、久城先生の体に抱きついた。
 あまりに勢いよく抱きついたせいで、久城先生の体が揺れる。

「なんだ。嫌がらせか?」

「嫌がらせです。私といたらよく眠れそうだって仰られていたじゃないですか」

「ああ、今は違った意味で寝たい」

 言葉の衝撃に怯まず続ける。

「それはアドレナリンのせいで、誰彼構わず、ですよね」

「ああ、そうかもな」

 押し問答の末、久城先生は大きなため息を吐き、私を抱き上げる。
「キャッ」と悲鳴を上げ、落とされないようにしがみついた。

 足を捻ったときみたいだ。
 まだあれから数週間しか経っていないのに、もうずいぶん昔に思える。
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