プールのあとはお腹が減る。
胃が潰れるような痛みがお腹に走った。

「な、なつ…」

夏実はトイレで首を吊り、自殺していた。

「どうして? 夏実、夏実っ!」

全身の力が抜け、床にお尻をついた。

トイレは水浸しだった。夏実も全身が濡れ、髪が肌にはりついている。

そのとき、スマホに着信が入る。

「川神夏実…」

それは夏実からだった。

「なんで…? 夏実はここで…」

やっぱり、プールで着信があった夏実は、本物の夏実じゃなかった。

……それなら一体。

「嫌だ。絶対に出ない! 出たくないっ!」

そのとき、誰かが女子トイレのドアを激しく叩いた。

「だ、誰!?」

スマホの着信音も鳴り続ける。

訳がわからなくなって、私は耳を塞いでうずくまった。

「ほんと、しょうがない奴だね」
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