お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

九条会長とは、このベリーヒルズビレッジを所有する旧財閥系「九条グループ」のトップに君臨するお方で、うちの父も日頃からとてもお世話になっている。

九条グループは、リゾート開発や再開発事業、大規模な宅地造成やオフィスビルの建設、マンションの分譲などの事業を展開している日本で三本の指に入る旧財閥系グループだ。

そんなグループの会長が息子の見合い相手に私を指名したというのは、いささか信じられない話なのだが、父が冗談でこんな話をするわけがない。

「なんで九条会長がそんな話を言い出したのですか？」

頭の中に浮かんだその疑問を声のトーンを抑えて口にした。

「実は二ヶ月ほど前に、極秘でうちの病院で九条会長の心臓バイパス手術を執り行ったんだ。命に関わる難しい手術だったんだが、その手術で私は執刀医を務めた。無事に手術を成功することができ、九条会長は大変お喜びになられてね。そこで話が終わればよかったんだが」

父の表情が明らかに曇ったのが分かった。

「会長が息子の見合い相手を探しているという話をしだしてね。なかなか身を固めようとしない息子さんにヤキモキしていると嘆き、『命の恩人である君ならば信用ができる。そんな君の娘さんと見合いをさせたい』と、そんなことを言い出したんだ」

「そんな……」