お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

思わず眉を潜める。お世話になっている会長にそう言われてしまえば確かに父も、むげに断わることはできないだろう。断って会長の機嫌を損ねたら、病院経営にも支障が出てくるかもしれない。
父の立場は痛いくらいに理解できる。できるけれども。

「私は……」

“やはり見合いを引き受けることはできません”そんな喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

胸に様々な感情が駆け巡る。男性経験がまったくない私にとって、いきなりの見合い話は重すぎるし到底受け入れられるものじゃない。

だけど、やはり父の立場を考えると、私が拒否することは父を困らせることになる。それに私には両親の期待を裏切った過去がある。……私は医者の道を選ばなかったことに大きな引目を感じているのだ。

どちらとも口を開かぬまま、重い沈黙がその場に流れる。その間、心の中でたくさんの葛藤と戦い、そして最終的にひとつの答えを出した。

「……お父様、私そのお見合い話をお受けします」

「いいのか？」

「ええ」

驚いたような表情を浮かべる父の様子から、父の中では私が見合い話を断わるものだと思っていたらしいことが推測できた。

私もついさっきまでは、もちろんそのつもりでいた。だが、あるいい方法を思いつき、ひとまずその見合い話を引き受けることにしたのだ。