復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?


昨日、嫌な思いをした理由がわかった。

『好きでもないのに、首を突っ込むな』

なんて考えは私の、ただの八つ当たりだ。

好きって言って欲しかった。
彼からの想いやりを感じたかった。

だから私は怒りを新にぶつけた。



本当は、自分の片想いだなんて気づきもせずに。



「………ごめんね。そうちゃん。私…」



復讐を誓った。
幼い頃から知っている幼馴染相手に、私の家族をバラバラにした会社の御曹司に。


好きにさせて振る。


なんていう復讐は、もう成功なんてしないのだ。



「好きなの…。新が…」




反吐が出るほど、退屈な復讐劇。




「………本当か?」




背後から聞こえてきた声に、私は背筋が凍るような感覚に陥る。


「新、久しぶり」


振り返れない。振りかえれば後戻りはできなくなる。

でも、後戻りできなくなるところまで行きたいという欲求が私を操って。


「………なんで泣いてんの?」

「これは…目にゴミが入ったから…」

「目にゴミが入って泣きながら俺への告白を颯汰にするってどんな状況だよ。」


近寄ってくる彼を直視する。

何故ここにいるんだろう?
仕事は?
忙しいんじゃないの?

どうしてそんなにも嬉しそうな表情をしているの?

湧き上がる質問はたくさんあった。


「あーあ。振られちゃったー。」


おどけたように、そうちゃんは話す。それから真剣な表情を浮かべて…。


「新が純連を泣かすことがあれば、僕が黙ってないから…。純連を一生大切にするっていう覚悟があるなら連れて行ってもいいよ」

「最初から覚悟の上で婚約してるっつーの。」


グイッと手を引かれて、空いているもう片方の手で私の荷物を新は持つ。


「また今度、3人でご飯でも食べに行こう」

「ああ。」


そうちゃんと新の会話を最後に、私は早鐘を打つ胸を沈めながら新と屋上を後にした。


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