第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 アリシアは青年の口元に手をかざす。



(良かった。ちゃんと息をしているわ)



 最悪の状態ではなかったことにとりあえずホッと胸を撫で下ろす。それから彼の肩を軽くゆすった。



「お嬢様!」



 遅れて馬車から降りてきたノアも、アリシアの方へ駆け寄って来てしゃがみこんだ。



「どうしよう、医者を呼ぶべきよね」


「そうですね。周辺の住民にも助けを求めましょう」



 ノアの言葉にうなずき、立ち上がろうとしたときだった。


 青年が──ゆっくりと目を開いた。



「あっ!気がついたのね!大丈夫?何かあったの?」



 青年は何も答えない。見ると、蜂蜜色の綺麗な瞳には覇気がない。



「待っていて、医者を探してくるから」



 アリシアがそう言うと、青年はゆっくり手を伸ばし、アリシアの服を弱々しい力でつかんだ。行くな、ということか。よく見ると、唇が何かを伝えるように動いている。


 アリシアは青年の声を聞き取ろうと顔を寄せる。

 彼は今にも消え入りそうな声でこう言っていた。



「腹が……減った……」



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