君を輝かせるのは私だけ。

「あのっ、木村さん!」

私の声に、私の予想通り、全国の舞台を客席から眺めて帰ろうとした彼に声をかける。

「…あ、毎回試合観ててくれた人。宮本選手か蒼井選手の彼女さんですか。」

彼は少し戸惑いながら答える。

そりゃそうだ。

いきなり名前を呼ばれて話しかけられたんだから。

「蒼井莉緒です。蒼井健太の妹です。そして…日本代表のコーチ見習いしてます。」

その言葉に彼は目を丸くする。

「妹…女で男子チームのコーチ?」

少し怪訝な顔をする。

「単刀直入に言います。……私とオリンピック金メダルを目指してくれませんか。」

彼はすごく驚いた顔をした後、笑う。

「冗談すか?俺あそこにも立ててないんすよ?…負けた俺への嫌味ですか。」

彼は悔しそうに中央に陣取るコートを指差す。

「…その悔しさ、あのコートよりも大きな舞台で晴らしませんか。」

私の言葉に彼は下を向く。

「…何で俺ですか。」

「欲しいと思ったから。必要だと思ったから。」

彼は呆れたように笑う。

「そんな子供みたいな理由で俺を代表に入れてどうすんの。なんの実績もない俺が入っても俺にできることは球拾いくらいです。」

「…木村くんは宮本選手と肩を並べる選手になるよ。日本の柱になるよ。」

真っ直ぐに思ったことを伝える。

でも彼には届かなくて、

「…妹とかコネで入ったあんたについて俺もコネで入れって?俺は実績残して、認められてから入りたいです。」

「…入り方ってそんなに重要?そこに成長する機会があるのに?そこにより高いレベルがあるのに?」

言いすぎた。
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