君を輝かせるのは私だけ。

「ちょ、健さん、たんま!」

俺が止めようとするけど時すでに遅し。

少し力加減した健さんの拳が座ってる木村くんの頭に落ちる。

「自分が負けた悔しさを人にぶつけてんじゃねーよ。その分練習しろ、頭使え。甘ったれんな。」

ガチトーンの健さんを久々にみて俺も固まる。

俺も初期の頃、

一人で全てやろうとしたら、

あのゲンコツくらって怒られたことが懐かしい。

「…すみませんでしたっ、」

少し震えた声。

「ま、わかるけどな。あいつも絶対言葉足らずだし。」

ゲンコツした手で優しく木村くんの頭を撫でる。

…健さんのこういうところずるいと思う。

「…で、どうする?」

「…俺はさらに成長したいです。憧れの宮本選手を超えたいです。」

その発言に少しホッとする。

よかった、あおがこれで少し喜ぶかな。

オリンピックが楽しみだな。

「っし、一緒に頑張ろうな!」

健さんが頭を撫で回す。

俺もホッと一息ついて、

「よろしく。」

と声をかける。

一件落着…かと思いきや、

「まぁ、絶対莉緒に謝れよ?」

撫で回した手を置いたまま首を回さして目線を合わせて木村くんにいう健さん。

ほんと、怖い

「健さん、こえぇ…」

木村くんは頷いて、また謝る。

「俺も一個条件だしていい?」

その言葉に頷いてくれる。

「信じられなくても、不満でも、とりあえず一回あおの言う通りに動いて。そしたらわかるから、あおのこと。」

その言葉に、わかりました、と返事が返ってくる。

…よかった。

これで合宿がさらに楽しみだ。
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