時雨刻
あれが、あのお方の頸に食い込んで、ぴしゃり、と打たれるたびに、ちりん、と場違いな、澄んだ音を立てます。


このままでは、あのお方が死んでしまう。

わたくしは、とっさに行動いたしました。

ここからすぐの、お庭の縁側真ん中には、小ぶりな燈籠がございます。

わたくしは縁側から降り、その燈籠のかさの部分をはずし、小脇にかかえました。

そうして再び縁側に上がり、そっと障子を開きます。
こちらを背にした奥様は、行為に夢中でわたくしの姿には、まったく気付きません。

一瞬、あのお方と目があいました。

"どうかぼくを助けておくれ"

灰靑色の瞳はわたくしにはっきりと訴えています。

迷いはありません。

わたくしは細心の注意を払いつつ、奥方様の背後に忍び寄りました。

そうして、石燈籠を両手で持ちあげ、えいっとばかりに奥方様の頭めがけて振り下ろしました!

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