カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~

数日経ったある日。清良は部長に呼び出され会議室へ向かった。

部署の体制上、仲根とセットで呼び出されることが多いのだが、この日は業務的な内容ではないからひとりで来てほしいと指示された。

個別に呼び出されるなんて、査定の面接以来だが、今はそんな時期でもない。何か気づかぬうちにミスでもしてしまったのかとヒヤヒヤする。

指定されたのは定員二十名ほどの会議室。わざわざこんな大仰な部屋を取るくらいだから、よほど大事な話があるのでは……?

早めに到着して待っていると、やがて部長が部屋に入ってきた。

「お疲れさま。急に呼び出してすまない」

あと数年で還暦を迎える部長。性格は温厚で真面目。感情的になっている姿を見たことがなく、無口で淡々としているせいか冷たい人にも見える。

だが、単純に感情の起伏が少ないだけのようで、飲み会の席になればはにかんでくれたりする。

少なくとも清良にとっては、非難するようなところもない、いい上司である。

「お疲れさまです」

軽く挨拶を交わしたあと、円形の巨大な会議卓の端っこに隣り合って座る。部長も清良も、場を繋ぐような世間話が得意ではないので、すぐさま本題に入った。

「実は専務のもとにこんなものが送られてきた」

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