カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
部長は懐から四つ折りにされた紙を取り出す。広げてみると、それは写真のコピーだった。

映っていたのは、清良と北村。場所は会社近くのカフェの入口。待ち伏せされたあの日の写真だろう。

「これは……」

一見すると抱き合っているように見える。正しくは嫌がって揉み合いになっているのだが、部長はそうは思っていないようだった。

「覚えはあるかね?」

「……はい」

「あるのかね……」

部長は珍しく驚いたように目を見開いた。おそらく誤解させてしまったのだろう、慌てて清良は弁解する。

「で、ですが、部長が思ってらっしゃるような写真ではありません! これは友人と喧嘩をして……その……手を引っぱられて転びそうになって……」

我ながら拙い言い訳だと嘆息した。語尾に向かってしぼんでいく声が、いっそう説得力を失わせる。

けれど、部長はわかってくれたようで、小さく息をついた。

「真面目な君のことだから、何か事情があったのだろう。だが、専務は風紀を乱されたとカンカンだ」

唇を引き結んでうつむく。そもそも清良の浅慮が招いたことだ。会社から近いところで、男性とふたりきりになどなるんじゃなかった。

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