カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
このとき、初めて清良は『両親をクビにされたくなかったら言うことを聞け』と鞠花に脅された。

恋人と別れさせられた挙句、奪われた。その青年もなかなかに調子のいい男で、金銭的な誘いに乗ってあっさりと清良から鞠花に乗り変えた。

その後も、地味な嫌がらせと命令は続いた。宿題のレポートを書けだの、買い物をしてこいだの、自分の代わりに行列に並んでおけだの。

日頃抱えている不満の捌け口として清良を使うことを覚えてしまったのだろう。

やがて清良は、この先もずっと鞠花の小間使いに成り下がるしかないのだと自覚した。

少なくとも、両親が定年を迎えて院瀬見家を出るまでは。

その間、男性とはお付き合いすまいと心に誓った。

また別れさせられても嫌だし、その男性が鞠花のものになるのはもっと嫌だ。

清良の予想通り、二十五歳になった今でも、上下関係は続いている。


「で? 君は一生、お嬢様の下僕として生きていくつもりか。見上げた忍耐力だ」

かいつまんだ説明に男は驚嘆の声をあげた。いや、呆れだろうか。

「その虐待のようなコルセットもご主人様の命令?」

「……はい」

「ほう……」

わずかに顎を反らせ、組んだ腕の中で指先をトントンと刻ませる。

無関心そうにも見えるし、なにかを深く考え込んでいるようにも見える。
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