カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「……どうして? 今までそんなこと一度も……」

「これまで私は、鞠花のことを自由に育て過ぎたのかもしれない」

沈鬱な声で呟く議員。鞠花の耳元に顔を近づけ、珍しく声を厳しくした。

「それから、ご来賓の方々を押しのけるのは非常に失礼だ。もう鞠花は大人なんだから、ちゃんと礼儀をわきまえなさい」

銀縁眼鏡の奥の目を険しくする。いつもとは違う父親の様子に、鞠花は軽くパニックを起こしているようだった。

「……急にどうしたっていうのよ……」

そのとき。背後から足音が近づいてきて、清良たちの真横で止まった。

「私がお父上にご指摘させてもらいました」

よく知る柔らかなバリトンボイス。その声の主を見て、清良は驚きに口元を押さえ、鞠花はぎょっと後ずさった。

「城ケ崎さん……!」

鞠花が悲鳴のような声をあげる。

総司は麗しいながらも、どこか毒を含んだ不穏な笑みを浮かべ、恭しく腰を折った。

「お久しぶりです鞠花さん。本日は父に代わって息子である私がご挨拶にまいりました。鞠花さんに、そして院瀬見議員にどうしても直接お会いしたかったもので」

気品漂うスリーピースのスーツに身を包み、相変わらず人前に立つ彼は紳士そのものだ。

だが、今日はその表情に、威厳を通り越して畏怖すら感じる。

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