カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「城ケ崎さんが更生するチャンスをくれたんだ。俺はもう犯罪まがいの命令なんて聞かない。他人に弱みを握られていいように使われるくらいなら、真っ当に働いたほうがまだマシだ」

清良以上にシビアな上下関係に置かれていた北村。

鞠花に親愛の情なんてこれっぽっちもなかったのだろう、辛辣な言葉を容赦なく浴びせる。

「もう鞠花のワガママに振り回される人生なんてまっぴらだ。俺も生まれ変わることに決めた」

北村が決意を語っている間に、総司のうしろに控えていた真鍋がこっそりと清良の横にやってきた。耳元に向けてぼそりと呟く。

「……でなければ『警察に被害届を出す』と脅したんですけどね」

う、と清良は固まる。説得の仕方は少々物騒だったようだけれど、結果的に北村が真っ当な生き方を選んでくれたならよかったのかもしれない……と思うことにする。

くしゃっと小切手を握り潰し、鞠花がわななく。

「……こんなお金……欲しいわけじゃ……」

おそらく、鞠花が欲しかったのは、お金でも忠誠でもない。

傍にいてくれる人――。

鞠花は、自分のワガママを聞いてもらうことでしか、他人とコミュニケーションを取ることができなかったのではないか。今となっては、そんなふうに思う。

愕然とする鞠花の両肩に、議員はそっと手を置いた。

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