【修正版】午前8時のシンデレラ
他の誰にも譲らない。
「肝に銘じます。早速ですが、明日から異動に出来ませんか?」
俺がそうお願いすると、彼は実に面白そうにふふっと笑った。
「相当焦ってるんだね、一条くん。いいだろう。大事にね。くれぐれも無茶はさせないで。頼むよ」
ここは我慢だ。
なるだけ負の感情を抑えて返事をする。
「はい」
「じゃあ、僕から東雲くん攻略法を伝授するよ」
彼がデスクから身を乗り出して、嬉々とした表情になった。
「それは……」
〝それは遠慮します〟という前に、副社長の口から洪水のように言葉が溢れ出した。
「東雲くんは意外と世話好きだからね。弱ってるように見せかけると親身に世話してくれるよ。弱者を放っておけない性格なんだよね。それから……」
弱ってるって……そう言えば副社長は総務ではダメ部長の振りをしてるらしい。
きっと彼女は仕事の出来ない部長をフォローするために、仕事も覚えていったのだろう。
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