捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
この人って、こんなふうに無邪気に笑ったりもするんだ。
光汰から助けてくれたときは、頼りがいがあって凛々しいイメージ強かったから……ちょっとギャップあってびっくりした。
「そういえば、佐渡谷さんの職場はこの辺りなんですか? この間も今日も、この辺にいらっしゃったので」
私はさりげなく視線を外し、窓の外を見て問いかけた。
すると、彼も頬杖をついて同じく外を眺める。
「ん、そう遠くはないけど近くもないかな」
「そうなんですか? じゃあ外回りって感じでいらしたんですか?」
「まあ、そんなところ」
そこに、先ほどオーダーしていたランチプレートが運ばれてきた。目の前にお皿を置かれ、私は一瞬で料理に興味を引かれる。
白身魚のほかに、じゃがいもやシソ、春野菜のフリット。緑や赤の彩きれいなサラダ。雑穀米にスープもついている。
スープの香りもいいけれど、やっぱりフリットの薄づき衣が一番食欲を掻き立てる。
「美味しそう! このお店、ずっと気になっていたんです。だけど、いまだに利用したことがなかったので」
「へえ。こんなに料理教室から近いのに」
佐渡谷さんはそう言いながら、木製のカトラリーケースから箸を取ってくれる。私は軽く頭を下げて箸を受け取った。
「私たちの仕事は調理なので、受講生の皆さんと一緒に食事するんですよ。お菓子作りのときもありますけど、そのときはお弁当作ってきたりしますし。外でランチすること自体あまりなじみがなくて」
彼は自分の前に置かれたランチプレートに乗った、チキンステーキにナイフを入れる。
スマートな所作に見惚れていると、彼が伏せていた色素の薄い瞳をこちらに向けた。
「なるほど。じゃあ、今日はお弁当があったんじゃないか?」
「あ……それが今日はうっかり寝坊して。そんな日に限って、午前中の担当レッスンはお菓子だったので……誘っていただいてよかったです」
「そう。空腹時、目の前に食べ物がある仕事って我慢するのが大変そうだ」
佐渡谷さんがナイフを持った手を動かしながら、さわやかに笑った。
待ち合わせた瞬間と比べ、かなり穏やかな気持ちになっていた私は、自然と話が弾む。