捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 約束の日。

 佐渡谷さんからはまだ連絡はない。

 とはいえ、今はまだ朝八時だから当然だ。約束はディナーなわけだし、佐渡谷さんは今日も仕事だろうし。
 電話が来るとしたら、お昼の休憩のタイミングが、仕事が終わる目処がつきそうな夕方頃だろう。

 そこまで想定できているくせに、どうもそわそわしてしまって、今朝は六時に目覚めてしまった。

「服装どうしよう」

 ロフト下のクローゼットを開き、引きで眺めてしばらく考え込む。

 佐渡谷さんの肩書きを知った今、その辺のダイニングバーとかではないのでは、と思ってしまう。そうかといって、勝手に豪華な行き先を想像して気合いを入れすぎるのも……。

 敦子に相談しようか迷っていたけど、昨日は向こうが休みで会えなかった。
 電話やメッセージで聞くこともできるとわかっていても、どうも気恥ずかしくて控えた。

 だって、どんな服にしたらいいかって小さな事柄を悩んでいる自分を晒すなんて。

 部屋にひとりきりなのに、羞恥心が溢れてきて両手で顔を覆った。
 数秒、心の中で悶えたのち、ぱっと顔を上げる。そして、クローゼットに手を伸ばした。
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