予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 ほかにどうすればよかったんだ。

 そう不満をもらす俺を、綾人は軽く肩を上げてにらむ。

「上司に抱かれた翌朝、目を覚ましたら男はいなくてお金が置いてあった。どう考えても、ただ遊ばれて口止め料を渡されたと思うよね」
「いや、そういうつもりじゃ……」

 言いながら、頭が痛くなってきた。

 俺はタクシー代にと思ってお金を置いて行ったけれど、確かにあの状況じゃ口止め料だと取られかねない。
 
 しかも相手は恋愛経験がなく、どこまでも真面目で控えめな吉木だ。
 
 あの夜のはただの遊びだと思い込み、俺に迷惑をかけないように、必死にかかわらないようにしてきたんだろう。
 
 脱力するようにその場にしゃがみこみ頭を抱える。
 
 彼女が悪いんじゃない。すべて俺の自業自得だ。

「そんなことにも気付けないって。兄さんが今までろくな恋愛をしてこなかったのが透けて見えるね」

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