予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 そして自然と心に浮かんだのは、五年間住み続けたこのマンションでも、小さなころからの思い出がある実家でもなく、いつも私を温かく守ってくれる社長の隣だった。
 

 一度部屋に戻ろうとエントランスの中に入りかけたとき、背後から靴音が聞こえてきた。

「香澄……っ!」

 切羽詰まった声で名前を呼ばれ、驚いて振り返る。

 そこには息を切らし、肩を上下させる社長の姿があった。

「社長?」

 彼は目を丸くする私の腕を掴み引き寄せると、まるでとじこめるようにきつく抱きしめた。

「頼むから、行かないでくれ」

 そう言って、抱きしめる腕に力をこめる。

「ん?」

 ただ電気を消したり戸締りをしたりするために一度部屋に戻ろうとしているだけなのに、なんで社長はこんなに必死に私を引き留めているんだろう。

「あの?」

 首をかしげた私を、社長が真剣な表情で見つめる。

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