予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 そう言う兄は、立派な経営者の顔をしていた。頼もしさに胸が熱くなる。

「じゃあ、急に来て悪かったな」
「ううん。会えてうれしかった。気を付けて帰ってね」

 一度口を閉じてから、手の中にあるお守りを見下ろした。

 そして勇気を出してつけくわえる。


「それから、お父さんにもよろしく言っておいて」

 照れくささを隠しながら言うと、兄は目元にしわをよせて笑った。

「了解。お前も、お腹の子を大事にしろよ」
「はい」

 私がうなずくのを見届けてから、兄は背を向けて歩き出した。

 その姿を見送りながら、ほうっと息を吐きだす。



 辺りを見回すと、すっかり夕暮れの空になっていた。

 藍色の空の高いところに、白く光る一番星が見える。



 冷たい風が吹いて、ぶるりと体を震わせる。

 陽が落ちたせいで、一気に気温が下がってきたみたいだ。


 
 帰ろう。そう思った。

 
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