■王とメイドの切ない恋物語■

舞踏会

午後はメイドの長のマーヤさんと、ペアでパーティーの準備だ。


エリザベス姫から、

「せっかくここにいるのですから、トーマ様と踊ってみたいわ。舞踏会を開いてちょうだい」

との、ご命令が下ったので、みんなで、あわてて準備しているのである。

急に舞踏会といっても、人が集まらないので、お城の中の人だけで、やることになった。

エリザベス姫としては、トーマ様と一緒に踊るのが目的なので、外部からのお客様なしで、お城の人だけでもいいらしい。

要するに、他に参加する人は誰だろうと、どうでもいいわ、といった感じだったみたいだ。




いきなりのことだったので、お城の使用人ほとんどが、パーティーの準備に駆り出されている。




マーヤさんは、忙しく動きながら、

「せめて、あと1日、時間が、ほしかったわ」

と、つぶやいている。


確かに。

ちょっと、いきなりすぎるよ。

バラのお風呂にのんびり入るんじゃなかったんかい!

と、思わずつっこみたくなる。




エリックも、駆り出され、パーティー会場に花を飾っている。

「やあ、リリア」

私に気が付き、笑顔をみせた。

「エリックも手伝ってるんだね。お庭の手入れもあるのに、大変だね」

「リリアの元気そうな顔が見れたから、来れてよかったよ」

と、エリックは照れくさそうに笑った。

< 104 / 396 >

この作品をシェア

pagetop