■王とメイドの切ない恋物語■
沈黙を破ったのは、トーマ様だった。

「今日は、エリザベス姫に、乗馬を教えてきたんだが、あの子、かなり上手で、ほとんど教えることがなかったよ」

と、トーマ様は笑っている。

私も普通に会話しなきゃ。

私、意識しすぎだよー。


「えぇ、さっき少し窓から見えたんですが、お2人とも、とても上手でした」

うそ、見えたんじゃなくって、見てたんだよね。



「エリザベス姫は、普段から馬を乗りこなしてるんだろうな、リリアはどうだ?」


「私は全く乗れないです。お2人とも馬をのりこなせるなんて、すごいですね」


トーマ様は、何か考え込んでいるようだった。



「お2人とも、とても、お似合いですね」



私がそう言うと、考え込んでいたトーマ様は顔をあげ

「そうか?」

と言った。

今が、トーマ様の気持ちを知るチャンスかもしれない。

メイドの身分で、こんなこと聞いてもいいかわからないけど、今しかない気がする。

私は、勇気を振り絞った。
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