■王とメイドの切ない恋物語■
私は、気持ちを落ち着かせ、聞いた。

「あの、ランチを外でって話だったんですが、何を作ればいいかわからなくて。トーマ様は、何がお好きですか?」


トーマ様は少し考えて、

「サンドイッチメインの、お弁当を作ってくれないか?持ち運べる感じの。具は、そうだな…ハムとか卵とか、あっ、トマトもいいね」

そう言うトーマ様の顔は輝いてて、

一瞬、可愛いって思っちゃったよ。


お弁当かぁー

「わかりました。がんばって作ります」

「楽しみにしてるよ」

トーマ様は、うれしそうに言った。

あんまり、お邪魔しても悪いので、そろそろ部屋に戻ることにした。



「トーマ様、お疲れの所、ありがとうございました。お邪魔しました」

私は、丁寧におじきした。



「いつでも遊びにおいで。夜は結構暇してるんだ」


そっ そうなの?

そんなこと言うと、また来ちゃうよ?


用もないのに、来ちゃうよ?




「ただ、話にくるだけでもいいんですか?」

「あぁ」

トーマ様は、優しくうなづく。

また、トーマ様と二人きりで話していいんだ。

用がなくても来ていいんだ。


幸せすぎるんですけど。

私はクラクラしながら、部屋を出ようとした。

「リリア…!」

トーマ様に呼び止められた。

瞳と瞳がぶつかる。

「はい」

沈黙が流れる。

トーマ様?

「いや、ごめん、何でもないよ」

トーマ様は、切なそうに微笑む。

何でもないって言ってるんだから、聞いちゃダメだよね?

「そうですか では失礼します。おやすみなさい」

私はそういうと、トーマ様の部屋を後にした。


「おやすみ、リリア」

トーマ様は閉まった扉に向かって、つぶやいた。
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