■王とメイドの切ない恋物語■

ランチの後

しばらく散歩して、トーマ様の所に戻ってみると、トーマ様は、木に寄りかかって本を読んでいた。

「あっ トーマ様」

私は、走ってトーマ様に近寄った。

「おかえり、リリア」


トーマ様は本を置いて、笑いかけてくれた。

私も笑い返す。



「勝手に散歩に行っちゃって、すみませんでした」

「いいんだ、ここの湖きれいだろう?」

私は、うれしそうに頷いた。

「はい、とても。向こうの方には花も咲いていて、癒されました」

「それはよかったよ。もしよければ、後でわたしとも散歩しないか?」

と、トーマ様は私を見つめた。

「はい、喜んで!」

私は笑顔で頷いた。

誘ってもらえて、すごく嬉しかった。

トーマ様が私を見上げ、自分の隣をトントンと指差している。

ここに座れ、ということなんだろうか?

私はドキドキしながらも、隣に座って、トーマ様と同じように木に寄りかかった。



トーマ様との距離。5センチ。

大接近だよ。

あー、緊張する。



そんなこと思ってると、

トーマ様が、いきなりこっちを振り向いた。



またまた私の顔が一気に、赤くなる。

もう、トーマ様の吐息が届く距離まで近づいている。




ドクン ドクン

胸が大きく高鳴る。

指や体に緊張が走る。

こんな間近で、トーマ様に見つめられたの初めて。

すごく恥ずかしくなってきて、モジモジしてしまう。

「リリア…」

「はい」

私は、トーマ様を見つめた。
< 172 / 396 >

この作品をシェア

pagetop