■王とメイドの切ない恋物語■
「あ、リリア」

チチリさんが振り向いた。

「今から、みんなで、お昼食べようって言ってたんだけど、リリアもどう?」

「食べます。もうお腹ペコペコ」

今日のお昼は、みんなが、それぞれ持ち寄ったものを分けた。

みんな色んなお弁当を、持ってきてて楽しかった。



夏休みは3日あって、今日は2日目。


お城から家が近い子は、実家から通っているから、お母さんの手作り弁当だ。



住み込みメイドの、私とチチリさんと残り5人は、シェフにお願いして、厨房を借りてお弁当を作ってきた。


私は、トーマ様とのランチと、同じお弁当を作ってみた。

食べていると、あの時のトーマ様とのことが思い出されて、思わず顔が、ほころぶ。



「リリア、なんかにやけてない?」

メイドのジルが突っ込んできた。

「そんなことないよ」

と誤魔化してみるけど、私って、やっぱり顔に出るみたい。


「あやしーい」

みんなに絡まれる。

トーマ様とのことを思い出して、にやけてたなんて恥ずかしすぎて言えやしない。

チチリさん、助けてーと視線を送ってみる。

チチリさんは、仕方ないわねーという顔で、

「リリア海初めてで、興奮しちゃって、朝から、にやけっぱなしなのよ。本当、見てておもしろいわ」

周りから、どっと笑いが起こる。


ふぅー、うまく誤魔化せた。

ありがとうチチリさんって、そのフォローの仕方はないよー。

シクシク。

まぁいっか。
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