■王とメイドの切ない恋物語■
「ちょっ ちょっとエリックどうしたの?」

私は耳まで赤くなる。


ドクン ドクン

胸が大きく高鳴る。

エリック…

こうやって抱き締められると、エリックが男だってことが、ひしひしとわかる。

たくましい腕や、厚い胸板が、体を通して伝わってくる。

エリックの心臓も、かなりドキドキしている。



「エリックってば、どうしちゃったの?」

私は、わざと明るく言ってみた。

私を抱き締める腕に、少し力が入る。



「リリア…もう気が付いているんだろう?」




なんて答えていいか、わからない。

苦しいよ・・・

すごいうれしい。

でも・・・

私は、どうしようもなくて、黙っていた。


「俺…リリアが好きだ」

!!!

私の身体に力が入る。

エリック…




「リリアが王のこと好きだっていうのは解ってる。諦めようかとも思った。でも、それでも…
リリアのこと、好きなんだ」

エリックの切ない声が、聞こえる。


「私…」

エリックが私に、コツンと頭を預ける。

「いいんだ。ごめんな。リリアを困らせるようなこと言って。でも今だけ、もう少しだけ、こうしてて・・・いいか?」

エリックの思いが、痛いほど伝わってきた。


「…うん」


私とエリックは、少しの間そのまま、海を見つめていた


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