■王とメイドの切ない恋物語■
屋上を出て、トーマ様が、部屋の前まで送ってくれる。

誰かに見つかったらいけないので、私はトーマ様の1歩後ろを歩いた。

この状態で見られても、不自然ではないだろう。




部屋の前に着くと、私はトーマ様を見上げた。

名残惜しいけど、今日は、もうお別れだ。

「送ってくださって、ありがとうございました」

私が礼をすると、トーマ様は笑って、

「あたりまえじゃないか、リリアは俺の大切な…」

大切な?

ドキドキドキ…





「彼女なんだから」

トーマ様は、言ったとたん真っ赤になった。


きゃーっ 彼女だって!

改めて聞くと、照れちゃうよーっ

あー、恥ずかしい。

あー、恥ずかしい。

お互い目が合って、くすっと笑う。

トーマ様は、1歩だけ部屋の中に入った。

ん?どうしたのかな?



私の手を取り、ひざまづいて

「おやすみ、リリア。またな」

そう言うと、私の手の甲に軽く口付けをして、去っていった。

「おやすみなさい…」




扉を閉めた後、しばらく放心する私。

はっと、我に返り

えーっ なになに?

今のは!

大混乱だ。

なんかあんなことされると、お姫様になったような気分になっちゃうって。

トーマ様のばかーっ。

あー、グラグラする。

もうだめだ。

私は、ベッドに倒れこむ。

トーマ様、私、幸せ過ぎて怖いです。

めちゃくちゃ幸せです。はい。

今日、絶対眠れないよ。

あー、トーマ様のせいだからね。

今ごろ何やってるんだろうな。

って、さっきバイバイしたばかりなんだけどね。

また、会いたくなってきちゃったよ。

トーマ様、トーマ様。


私の大興奮は、しばらくおさまらず、またまた寝不足になるのであった。

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