■王とメイドの切ない恋物語■
はぁっ はぁっ

走ってきたから、息が上がる。

私はドアの前で、呼吸を落ち着かせた。



コンコン

小さくノックした。


「はい」

トーマ様の、愛しい声が聞こえる。

トーマ様…

目が潤む。

でも、ぐっと我慢し、ドアを開けた。


「リリアです」

私が部屋に入ると、トーマ様は、はっと顔をあげ、私を見た。

言わなきゃ。

誤解を解かなきゃ。

このまま終わりになるなんて、耐えられないよ。

トーマ様、わかって。

私は、祈るような気持ちで口を開く


「トーマ様、わたし…」


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