■王とメイドの切ない恋物語■
私が言いかけると、トーマ様は、近寄ってきて、自分の頭を私の肩に乗せた。

え?

私は、言い掛けた言葉を飲み込んだ。



「リリア、お前の口から真実を聞きたい。俺はリリアを信じてる。リリアも、ここを出て、ラノスと暮らしたいわけじゃないんだろう?」

トーマ様・・、私のこと信じてくれてたんだ。

そうだよ、そんなわけないよ。

私は、頷いた。

「私は…私は、ずっとトーマ様のそばにいたい。離れたくない。もう、トーマ様以外愛せないよ…」


私は震える声で、トーマ様に告げた。

トーマ様を見つめる目に、涙が込み上げてくる。


「そうか、よかった」

トーマ様の、優しく温かい声が聞こえてきた。

そして力強く、私を抱き締めてくれた。

我慢していた涙が、あふれてくる。


「俺も同じだ。もうリリア以外、愛せない」

トーマ様の言葉が、私の心を、優しく満たしていく。

「トーマ様」

涙が止まらない。

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