■王とメイドの切ない恋物語■
1時間半ほど走ると、村の端に着いた。

乗り合い馬車だと、色々遠回りするし、乗り換えもあるから、3時間くらいかかるのにね。

トーマ様と一緒だと、楽しくて、あっという間だよ。



「リリア、疲れただろう。少し休むか?」

「そうだね」


私は、うーん、と伸びをする。

その瞬間、


グラッ


バランスを崩した。

「きゃっ」

トーマ様が、素早く支えてくれる。

「びっくりした。ありがとう、トーマ様」

「リリアは本当、目が離せないよな」

トーマ様は笑った。

私は照れ笑いをし、トーマ様の胸に頬を寄せた。


「どこで休憩しようか?」

ここは私の生まれ育った村。

大きな町みたいに、飲食店などはない。




うーん、困ったな。

「村の中心の、広場で休もうか」

「あぁ」

二人は馬を降りて、広場に向かった。



うっ。やっぱり目立つな。

白馬引きつれて、見た目、王子様みたいな人が歩いてたら、みんなびっくりだよね。

ほら、あのバーバラおばーちゃんなんて、あんぐり口を開けて、たらい落としちゃったじゃない。

小さな村だから、ほとんど、みんな知り合いだ。


でも、トーマ様が目立ちすぎて、私には、みんな気が付かないみたい。

そうだよね。


私がまさか、こんな白馬プリンスと一緒にいるなんて思わないもんね。

あはは。変な感じ。


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