■王とメイドの切ない恋物語■
「トーマ様、ここのベンチに座ろう」

「そうだな」

馬を近くの木に縛り、小さなベンチに座る。


「ごめんね、お店じゃなくて。お茶は持ってきたから」

私が、そう言って、お茶を手渡すと、

「いいんだ。俺、この、のんびりした雰囲気が好きなんだ」

トーマ様は、笑顔で空を見上げた。

よかった。



しばらく、お茶を飲んでいると、誰かが近づいてきた。

「もしかして、リリアちゃん?」

「あ、ステラさん」

私の実家の隣に住んでいる、気さくな、おばさんだ。

「もーっ びっくりしちゃったわよ!こーんな王子様みたいな、かっこいい人と一緒にいるんだもの。一瞬わからなかったわ」

ステラさんは、豪快に笑った。

王子様というか、この国の王様なんだけどね。

ははは。



トーマ様は、立ち上がり、

「トーマ・ガーランドです。よろしくお願いします」

と、ステラさんに握手した。

「まー、礼儀正しい青年ね。私はステラ。よろしくね。この人なら、きっとリリアちゃんのお父さん、お母さんも大歓迎よ」

そう言って、バシバシ私を叩いた。

「もうー。痛い、痛い。ステラさん」

私は笑いながら、ステラさんを見た。



少しして、ステラさんは、急に真顔になって、トーマ様を見つめ始めた。

「ん?トーマ・ガーランド?なんか聞いたことあるわね。それによく見ると、顔も見たことあるような…?」


やだ、ばれちゃう!

騒ぎになったら、せっかくのデートなのに台無しだよ

どうしよう。

ステラさんが、気が付くまでに、ここを離れよう。

「では、ステラさん。また今度遊びに行きますね。トーマ様、行きましょう」

私は、立ち上がった。



トーマ様は、ステラさんに頭を下げ、馬を連れにいく。

「リリアちゃん、せっかく帰ってきたんだから、時間あったら、実家にも顔出してあげてね」

ステラさんは、笑顔で見送ってくれた。

「はーい、また」

私も、笑顔で手を振り、広場を後にした。

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