■王とメイドの切ない恋物語■
トーマ様は、黙々と朝食を召し上がっているようだ。

いつも、朝食の時は、1人だ。

1人で食べる朝食って、寂しくないのかな?

そういえば、お母様とか、兄弟はいないんだろうか?

私は、トーマ様のことを、何も知らないことに気が付いた。

知っているのは、幼いときに、お父様を亡くされたことだけ・・・。

知りたいな・・・。トーマ様のことなら、何でも知りたい。


トーマ様の食事の係りにならなければ、ほとんど顔を合わす機会がないので、私は、食事当番が回ってくることを楽しみにしていた。


少しでも、トーマ様が見たい。

それが、正直な気持ちだった。

トーマ様を見るたびに、胸が苦しくなる。

自分の中で、トーマ様の存在が、どんどん大きくなっていく。


自分でも、どうしたらいいのかわからない。


叶わない恋なんて、しても辛いだけなのに。


その、きれいな透き通った目も、ブロンドの髪も、たくましい体も、そしてたまに見せてくれる優しい微笑みも、全てが私を翻弄していく。

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